木造建築の特徴
①「ぬくもり」と「やさしさ」を感じる空間を創造。
② 設計・デザインの自由度が高い。
③ 大断面集成材や特殊金物で大空間も実現可能に。
④ モルタルなどで加工した耐火木材でより火に強く。
⑤ 再生産可能な木を使う建築は地球環境にも人にも優しい。
炭素固定
木材を使うと温暖化が防げる!?
樹木は、その成長過程において、二酸化炭素と水分から、炭素を含んだ栄養分と酸素をつくります。この栄養分は木を構成する成分に変化し、樹木の中にため込まれていきます。木材を構成する成分は、95%以上がセルロース、ヘミセルロース、リグニンという成分から成り、構成する原子は、炭素(C)、水素(H)、酸素(O)で、そのうち、炭素は約5割(重量ベース)を占めます。
例えば、35年生のスギ(胸高直径20㎝、樹高18m、材積0.28m3)の場合、この樹木が固定している炭素量は、容積密度(314㎏/m3)、拡大係数(1.23)、地下部・地上部比(0.25)、炭素含有率(0.5)から求めると約68㎏です。
また、スギ1m3(105mm×105mm×3mの柱30本分)に固定される炭素量は、容積密度、炭素含有率から求めると約160㎏です。(二酸化炭素の重さに換算すると約590㎏)。
なお、樹木の炭素固定量は、一般に林齢が若い方が多く、50年生以上の木よりも20~30年生の若い木の方がたくさん炭素を固定できます。
また、他の材料と比較して材料を製造する時の炭素放出量が極めて少ないことからも、木の家は「第二の森林」と言われています。
木材の異方性
向きによって性質が違う!
木材は図に示した3方向(L:繊維方向・R:放射方向・R:接線方向)で、物理的、機械的性質などが異なり、異方性を示します。圧縮強度はL方向が最も高く、R方向やT方向ではその1/10~1/20程度となります。
木材が繊維飽和点以下の含水率域で水分が吸着・脱着する際に起こる膨潤収縮も異方性を有し、その収縮率は、L:R:T=0.5~1:5:10程度とされます。
製材品の「狂い・変形」の主な要因は、膨潤収縮であり、これらを防ぐためにも、木材の乾燥はとても重要です。
調湿特性
木材が湿度を調節する!?
木材には調湿作用があることが知られています。
調湿の原理は、①湿度が上昇、または温度が低下すれば「吸湿」し、湿度を低下させる、②湿度が低下、または温度が上昇すれば「放湿」し、湿度を高めることです。吸湿性の材料がその周囲の湿度を調節(=周りの湿度が一定になるように自動的に調節)する働きを「調湿作用」、その働きをもつ能力を「調湿特性」と呼びます。
木の調湿作用を引き出すのに必要な厚さ(有効な厚さ:岡野1987)
温湿度変化の周期:1日 |
有効な厚さ(mm):3.0 |
温湿度変化の周期:3日 |
有効な厚さ(mm):5.2 |
温湿度変化の周期:10日 |
有効な厚さ(mm):9.5 |
温湿度変化の周期:1ヶ月 |
有効な厚さ(mm):16.4 |
温湿度変化の周期:1ヶ年 |
有効な厚さ(mm):57.3 |
防火性能
木が火を防ぐ!?
延焼防止・崩壊抑制性能
建物の部材として「燃え抜けないことや壊れないこと」を目標としています。
この性能を向上させる手法としては、着火と同時に、表面に炭化層が形成され、ゆっくり燃え進む(0.5~0.7mm/min)という木材の特徴を活かし、材料を太く厚く使う方法(燃えしろ設計)があります。
着火・発熱・発煙防止性能
建築材料として「燃えないこと」を目標としています。
この性能を向上させる手法としては、木材に難燃薬剤を含浸させる方法等があり、不燃材料や準不燃材料の国土交通大臣認定を取得した木材が実用化され流通しています。
建築基準法に定められている制限
構造制限 |
防火構造、準耐火構造、耐火構造 |
内装制限 |
不燃材料、準不燃材料、難燃材料 |
耐朽・耐蟻性
スギは腐りにくい?
耐朽・耐蟻性には、比重、硬さ、抽出成分などが関与しており、特に抽出成分が最も大きく影響し、その大部分が心材に含まれています。
なお、辺材についてはどの樹種でも腐朽しやすく耐朽性は小さいので、注意が必要です。
木材の腐朽、蟻害の要因には、温度・湿度・酸素・栄養源などの条件があります。木材の乾燥は害虫の防除・死滅、カビ、腐朽、イエシロアリ食害の予防に有効な手段であることから、「乾燥材」(20%以下)が望まれています。
熱の伝わり方
木材は、数値上の断熱性能はそれほど高くありませんが、熱の伝わりを緩和する作用があります。木材は、熱伝導率が小さく、比熱(温まりにくさ・冷めにくさ)が大きいため、熱拡散率は小さいという特徴があります。この熱拡散率が小さいほど、温度に対する反応(応答)に遅れが生じるので、熱をためることができるのです。
音の伝わり方
遮音性能
外部や隣室からの空気伝搬音は、主に壁で遮音します。遮音性能は壁材の面密度に比例することから、以下による工夫が効果的です。
①壁材にはできるだけ厚く、比重の大きい材を使う
②空気層を持つ多重構造の採用
③窓や扉の隙間を減らす
吸音性能
木質材料は低・中・高音をバランスよく吸音し、適度な吸音率があると言われています。
木材が鉄やコンクリート建物の内装材として使用されるのは、壁面に投射された音を吸収する能力(吸音率)が優れているからです。
※本サイトのデータは「とちぎ材のすすめ/発行元:栃木県環境森林部林業振興課栃木県林業センター/発行年月日:平成24年3月」を元に作成されています。